贈与税とは?税率・計算方法と非課税にする5つの方法を解説

逆に言えば、年110万円以下なら申告も納税も不要です。ここを正しく押さえるだけで、無駄な税金も追徴課税も避けられます。
この記事では、贈与税の仕組み・速算表を使った計算方法・非課税にする5つの方法、そして申告から納付までの手順を、税理士として15年やってきた私が具体的な数字で整理します。名義預金や7年ルールといった、後から痛い目を見やすい論点も正直にお伝えします。
贈与税とは?基本の仕組みをわかりやすく解説

贈与税は、個人から贈与によって財産を受け取った個人にかかる税金です。財務省の資料では、取得した時の時価を課税価格とし、相続税を補う「相続税の補完税」と位置づけられています。
なぜ補完税なのか。もし贈与に税金がかからなければ、生きているうちに財産を配ってしまえば相続税を逃れられるからです。そのすき間を埋める税金、と理解すると腑に落ちます。
贈与税がかかる財産の範囲
対象は現金だけではありません。預貯金、不動産、株式、自動車など、金銭で見積もれる財産はほぼすべて含まれます。
実務でよく見るのが「親名義の口座から子へお金を移した」ケース。これも立派な贈与です。タンス預金だから大丈夫、ということはありません。
みなし贈与とは
形式上は贈与でなくても、実質的に贈与とみなされる場合があります。これを「みなし贈与」と呼びます。
たとえば、時価3,000万円の土地を親から子へ500万円で売った場合。差額の2,500万円分は、実質的に贈与を受けたと判断されます。安く譲る・タダで肩代わりする、こうした行為は税務署が見ています。
贈与税の非課税財産
一方で、贈与税がかからない財産もあります。扶養義務者からもらう生活費や教育費、香典・お祝い金、法人からの贈与(これは所得税の対象)などです。
ここを混同して「お年玉も申告が必要では」と心配する方がいますが、常識の範囲内なら不要です。
財産の名義と贈与税の注意点
私が現場で一番注意を促すのが、名義の問題です。子ども名義の口座にコツコツ入金していても、通帳と印鑑を親が管理し、子が存在を知らなければ「名義預金」と判断されます。
名義が子でも、実質的に親の財産。これだと贈与は成立せず、後の相続時に親の財産として課税されます。名義を分けただけで安心するのは危険です。
贈与税の計算方法と税率(速算表つき)
贈与税の計算は、思ったより単純です。1年間に受けた贈与の合計から基礎控除110万円を引き、残りに税率をかけて控除額を引く。これだけです。

暦年課税の税率は累進で8段階。課税価格200万円以下は10%、3,000万円超は55%です。さらに、贈与する人ともらう人の関係で「一般税率」と「特例税率」に分かれます。
一般税率(一般贈与財産)の計算
一般税率は、特例税率に当てはまらない贈与に使います。兄弟間、夫婦間、親から未成年の子への贈与などです。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
特例税率(特例贈与財産)の計算
特例税率は、その年の1月1日時点で18歳以上の人が、父母や祖父母など直系尊属から受けた贈与に使います。一般税率より少し負担が軽くなります。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
両方の計算が必要な場合
1年のうちに、祖父からの贈与(特例)と兄からの贈与(一般)が両方ある、というケースもあります。この場合は少し手間がかかります。
全体の合計額からまず両方の税率で全額の税額を出し、それぞれの財産の割合で按分する、という手順を踏みます。複雑なので、該当する方は次の具体例で流れを確認してください。
具体的な計算例で確認
父から500万円の贈与を受けた、18歳以上の子のケースで計算します。
まず500万円から基礎控除110万円を引くと390万円。特例税率なので「400万円以下=15%、控除額10万円」を使い、390万円×15%-10万円=48.5万円。これが納める贈与税です。
同じ500万円でも、兄からの贈与なら一般税率です。390万円×20%-25万円=53万円。誰からもらうかで4.5万円違う、というのが実感できると思います。
贈与税がかからない5つのケースと非課税の方法
贈与税は工夫次第で大きく抑えられます。私が実務で使う代表的な非課税の方法を5つ紹介します。

ただし、特例には使える期間や細かい要件があります。「使えると思ったら対象外だった」を避けるため、ここは数字と条件を正確に押さえてください。
年間110万円以下の基礎控除
最も基本かつ強力なのが、暦年課税の基礎控除110万円です。1月1日から12月31日までに受けた贈与の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず、申告も不要です。
毎年110万円ずつ計画的に渡せば、10年で1,100万円を無税で移せます。地味ですが、これが王道です。
生活費・教育費の贈与
親や祖父母など扶養義務者からの生活費・教育費は、必要な都度渡す分には非課税です。学費の仕送り、医療費の負担などがこれにあたります。
注意点は「必要な都度」という部分。数年分の学費をまとめて渡し、預金に残したままだと贈与とみなされる可能性があります。
夫婦間(配偶者)への贈与の特例
婚姻期間20年以上の夫婦の間では、居住用不動産またはその購入資金の贈与について、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで控除できます。いわゆる「おしどり贈与」です。
正直に言うと、この特例は使い所を選びます。配偶者は相続でも1億6,000万円まで非課税になるため、安易に使うと登録免許税や不動産取得税で損をすることもあります。私は無条件にはおすすめしません。
住宅取得等資金の非課税特例
父母や祖父母から、住宅の新築・取得・増改築の資金をもらう場合に使える非課税枠があります。財務省資料では、一般の住宅で1,000万円、東日本大震災の被災者に係る非課税限度額は1,500万円とされています。
中古住宅を買う場合は、耐震基準に適合していること、または昭和57年以降に建築されていること、といった要件があります。築年数の古い家を狙うなら、ここを必ず確認してください。
結婚・子育て資金の一括贈与
結婚・子育て資金を一括で贈与する場合の非課税特例もあります。金融機関に専用口座を作り、使い道を結婚・出産・育児に限定する仕組みです。
ただし手続きが煩雑で、使い切れなかった分には贈与税がかかります。私の経験上、よほどまとまった金額を急いで渡す事情がなければ、毎年110万円の暦年贈与で十分なことが多いです。
暦年課税と相続時精算課税はどちらを選ぶ?

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの仕組みがあります。どちらを選ぶかで、将来の税負担が大きく変わります。
2024年の改正で両者の中身が動きました。ここは情報が古いと判断を誤るので、最新のルールで整理します。
相続時精算課税制度の仕組み
相続時精算課税は、原則60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与で選べる制度です。累計2,500万円までは特別控除で贈与税がかからず、超えた部分に一律20%の贈与税がかかります。
名前のとおり、贈与した財産は相続時に相続財産へ加算して精算します。つまり、税の支払いを先送りする制度、という性格です。
2024年1月からは、この制度にも年110万円の基礎控除が新設されました。しかもこの110万円分は、相続時に相続財産へ加算されません。これは大きな改正です。
2024年からの生前贈与加算(相続開始前7年)
暦年課税には落とし穴があります。相続が始まる前の一定期間に受けた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算し直すルールです。
この期間が、従来の3年から7年へ段階的に延長されました。亡くなる直前に慌てて贈与しても、戻されてしまう、というわけです。早く始めるほど有利、という結論はここから来ます。
暦年課税との比較と選び方
財務省資料では、相続時精算課税の適用件数は令和3年7.0万件、令和4年5.0万件、令和5年6.2万件と推移しています。2024年改正で使い勝手が増したため、今後は選ぶ人が増えると私はみています。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年110万円 | 年110万円(2024年〜) |
| 特別控除 | なし | 累計2,500万円 |
| 税率 | 10〜55%の累進 | 2,500万円超は一律20% |
| 相続財産への加算 | 相続前7年分を加算 | 2,500万円分を加算(110万円分は加算なし) |
| 対象者の制限 | なし | 60歳以上から18歳以上の子・孫 |
私の判断基準はシンプルです。コツコツ長期で渡せるなら暦年課税。まとまった額を一度に渡したい、または値上がりしそうな財産(自社株など)を今のうちに移したいなら相続時精算課税。一度精算課税を選ぶと暦年課税には戻せないので、ここは慎重に。
贈与税の申告手続きと納付の流れ
非課税枠を超えたら、申告と納付が必要です。期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで。所得税の確定申告とほぼ同じ時期です。

競合記事ではここが薄いので、実務でつまずきやすい点を中心に手順を示します。
申告書の書き方と必要書類
使う申告書は「贈与税の申告書(第一表)」です。暦年課税か相続時精算課税かで添付する書類が変わります。
特例税率を使うなら、贈与者との関係を示す戸籍謄本が必要です。住宅取得資金の特例なら、契約書の写しや登記事項証明書も求められます。書類不備で特例が使えなくなる、というミスが一番もったいないです。
提出方法と申告期限
提出先は、もらった人(受贈者)の住所地を管轄する税務署です。窓口持参、郵送、そしてe-Taxによる電子申告から選べます。
前述のとおり期限は翌年3月15日。土日にあたると翌平日にずれます。私はいつも、2月中に書類をそろえるよう顧客に伝えています。3月は税務署も混みます。
納付方法・延納・物納制度
納付も申告期限と同じ3月15日まで。現金一括が原則で、金融機関の窓口、コンビニ、口座振替、クレジットカード、e-Taxのダイレクト納付などが使えます。
一度に払えない場合は、最長5年の延納が認められることがあります。担保が必要で、利子税もかかります。なお、相続税と違い、贈与税には物納(モノで納める)の制度はありません。ここは間違えやすいので注意してください。
申告が遅れた場合のペナルティ
期限を過ぎると、本来の税額に加えてペナルティがかかります。期限内に申告しなかった場合は無申告加算税、納付が遅れた場合は延滞税です。
悪質と判断されれば重加算税という重い罰も。正直、後から払うと本税より高くつくことすらあります。気づいたら一日でも早く、自主的に申告するのが傷を浅くするコツです。
贈与税で失敗しないための実務上の注意点
ここからは、教科書には載りにくい現場の話です。税務調査で実際に指摘されるのは、計算ミスより「贈与が成立していない」パターンが圧倒的に多いです。

贈与契約書の作り方と名義預金対策
贈与は、あげる側ともらう側の合意で成立します。口約束でも有効ですが、それを証明できなければ意味がありません。だから契約書を作ります。
契約書には、日付・あげる人ともらう人の氏名・金額・財産の内容を記し、双方が署名押印します。そして送金は手渡しではなく振込で、通帳・印鑑はもらった本人が管理する。ここまでやって、ようやく名義預金と言われません。
税務調査で指摘されやすいケース
私の経験上、指摘が集中するのは次のような場面です。子名義の口座を親が管理、専業主婦の妻名義に夫の収入が積み上がっている、孫の口座に祖父母がコツコツ入金、といったケース。
いずれも共通点は「お金は移したが、もらった人が自由に使える状態になっていない」こと。名義を変えただけでは贈与にならない、と肝に銘じてください。
海外居住者・国外財産の取り扱い
贈与する人ともらう人の住所が国内か国外か、財産が国内か国外かで、課税範囲が変わります。海外赴任中の子へ送る、海外に不動産がある、といったケースは特に複雑です。
「国外に出れば日本の贈与税はかからない」と考える方がいますが、それは誤解です。一定期間内の出国では国外財産も課税対象になります。海外がらみは自己判断せず、必ず専門家に確認してください。
税理士に相談すべきケースと費用の目安
110万円以下の暦年贈与だけなら、税理士は不要です。一方で、不動産が絡む、金額が大きい、相続時精算課税を検討している、海外が絡む、といった場合は相談をおすすめします。
費用は事務所により幅がありますが、贈与税申告の代行で数万円〜十数万円が一つの目安です。特例の判断を一つ誤るだけで、報酬を大きく上回る税金が動きます。私自身、迷ったら聞いてほしい、と思っています。
贈与税についてよくある質問(FAQ)

最後に、相談現場でよく受ける質問に短く答えます。
よくある質問
贈与税で損をする人の多くは、知らなかった・後回しにした、のどちらかです。今年贈与する予定があるなら、まず110万円の枠と7年ルールだけでも頭に入れておく。それだけで、来年の3月が一気に楽になります。
