贈与税の税率を一覧で解説|計算方法と一般・特例の違い

私は相続・贈与専門の税理士として15年、現場で贈与の申告を扱ってきました。この記事では、速算表の見方から計算例、2024年改正の影響、否認された失敗例まで、実務で詰まりやすいポイントを具体的な数字で説明します。
税率表を眺めるだけでは「自分はいくら払うのか」が見えてきません。だからこの記事は、金額を入れて計算する手順を中心に組み立てています。
贈与税の税率とは?まず結論から知る

贈与税の税率は、もらった財産そのものにかかるのではありません。1年分を合計し、110万円の基礎控除を引いた残りに対してかかります。国税庁もこの暦年課税を原則としています。
贈与税税率の基本的な考え方
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産を合計して計算します。ここから基礎控除110万円を差し引いた金額に税率を当てはめる、という流れです。
税率は超過累進課税。つまり、もらった金額が大きいほど税率も段階的に上がります。最高は55%です。
一般税率と特例税率の2種類がある理由
贈与税の速算表は2つあります。一般税率と特例税率です。
特例税率は、祖父母や親など直系尊属から、その年の1月1日時点で18歳以上の子・孫への贈与に使えます。親子間の財産移転を後押しするため、同じ金額でも一般税率より負担が軽くなる設計です。
それ以外、たとえば兄弟間や夫婦間、他人からの贈与は一般税率になります。ここを取り違えると税額が変わるので、最初に確認すべき分岐点です。
暦年課税制度のしくみ
暦年課税は、年間110万円以下なら贈与税がかからず、申告も不要です。これが基本のかたち。
110万円を超えた分にだけ税率がかかります。たとえば年間200万円もらっても、課税対象は90万円です。全額に税率がかかるわけではない、という点を勘違いしている人が本当に多い。
贈与税の税率表(速算表)と税額の計算方法
ここが本題です。計算式はシンプルで、「(贈与額-110万円)×税率-控除額」。この一本だけ覚えれば足ります。実際に表と例で見ていきましょう。

一般贈与財産用の速算表と計算例
兄弟間・夫婦間・他人からの贈与など、特例税率に当てはまらない場合に使う表です。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
例として、兄から500万円をもらった場合を計算します。500万円-110万円=390万円。これは400万円以下なので税率20%、控除額25万円。
390万円×20%-25万円=53万円。これが納める贈与税です。
特例贈与財産用の速算表と計算例
親や祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に使う表です。同じ金額でも控除額が大きく、税負担が軽くなります。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
同じ500万円でも、父から20歳の子への贈与なら計算が変わります。500万円-110万円=390万円。これは400万円以下で税率15%、控除額10万円。
390万円×15%-10万円=48万5,000円。一般税率の53万円より4万5,000円安い。誰からもらうかでこれだけ差が出ます。
一般と特例の両方が必要な場合の計算
1年の間に、父からの贈与(特例)と兄からの贈与(一般)の両方を受け取った年。このときは少し手間がかかります。
まず全部の贈与を合計し、それぞれの税率で全体の税額を出してから、贈与額の割合で按分する、という手順を踏みます。表を別々に当てはめるだけでは正しい税額になりません。
正直、この混在パターンは手計算でミスが出やすい部分です。金額が大きいなら、ここは税理士に確認することを勧めます。
基礎控除110万円の使い方
基礎控除110万円は、贈与者ごとではなく「もらった人1人につき年間110万円」です。父から100万円、母から100万円もらえば合計200万円で、110万円を超えた90万円が課税対象になります。
ここを「あげる人ごとに110万円」と誤解している人が多い。私の経験上、複数の親族からもらう年は要注意です。
相続時精算課税制度を選んだ場合の税率と特徴
暦年課税のほかに、相続時精算課税という選び方があります。2,500万円までの特別控除があり、超えた分は一律20%。まとまった額を一度に渡したいときに使われます。

相続時精算課税制度のしくみ
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べる制度です。選択した贈与者ごとに、累計2,500万円までは贈与税がかかりません。
2,500万円を超えた部分には一律20%の税率。ただし名前のとおり、贈与した財産は将来の相続時に相続財産へ加算して精算します。税金が消えるわけではなく、後ろにずれる制度だと理解してください。
年110万円の基礎控除(2024年新設)
2024年から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されました。これは大きな改正です。
この110万円以下の贈与は、申告も不要で、しかも将来の相続財産にも加算されません。従来は1円でも申告が必要でしたから、使い勝手が一気に上がりました。
暦年課税との有利不利の比較表
どちらが得かは、贈与の総額と期間で変わります。実務でよく聞かれる違いを表にしました。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年110万円 | 年110万円(2024年新設) |
| 特別控除 | なし | 累計2,500万円 |
| 税率 | 10〜55%の累進 | 2,500万円超は一律20% |
| 相続時の加算 | 2024年以降は最大7年分 | 贈与額を加算(110万円控除分は除く) |
| 制度の変更 | 毎年選べる | 一度選ぶと暦年に戻せない |
私の立場をはっきり言うと、コツコツ少額を長く渡せる家庭なら暦年課税、まとまった額を早く渡したい・相続まで時間がない人は相続時精算課税が候補です。どちらも一長一短で、家族構成と財産額しだいです。
税率が下がる・かからない非課税制度と特例

税率の前に、そもそも非課税にできる制度があります。使えるものを先に確認したほうが得です。年110万円の基礎控除に加えて、目的別の特例がいくつか用意されています。
配偶者控除(おしどり贈与)の要件
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与した場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで控除できる特例です。
注意点が一つ。この特例を使うには、贈与税がゼロでも申告が必須です。「税金がかからないから申告不要」と思い込んで使えなくなる、という失敗を何度も見てきました。
教育資金・結婚子育て資金の非課税制度
祖父母などから一括で教育資金を受け取る場合の非課税制度や、結婚・子育て資金の非課税制度があります。金融機関で専用口座を作り、領収書で使途を管理するのが基本の流れです。
ただし期限つきの制度で、使い切れずに残った分は課税対象になることがあります。制度ごとに上限額・対象範囲・期限が細かく決まっているので、利用前に最新の要件を必ず確認してください。
住宅取得等資金の非課税制度
父母や祖父母から、住宅の新築・取得・増改築のための資金をもらう場合の非課税制度です。住宅の性能や契約時期で非課税枠が変わります。
枠は改正で頻繁に動く分野です。金額をここで断定すると古い情報になりかねないので、申し込み時点の国税庁の最新案内で確認するのが安全です。
そもそも贈与税がかからない財産の具体例
見落とされがちですが、最初から贈与税の対象外になる財産があります。
親が子の生活費や学費を必要な都度払うもの、常識的な範囲の香典・祝い金・お見舞いなどです。これらは扶養義務の範囲や社会通念として非課税。仕送りや授業料の都度負担に税金はかかりません。
ただし、生活費名目で渡したお金を子が貯金や投資に回すと、その部分は贈与とみなされ得ます。「必要な都度」「使い切る」がキーワードです。
贈与税の申告手続きと納付・ペナルティ
税額を計算したら、次は申告と納付です。期限は原則として贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで。ここを過ぎるとペナルティが乗ります。

申告書の書き方と添付書類・e-Tax対応
暦年課税なら贈与税申告書の第一表に、誰からいくらもらったか、特例税率か一般税率かを記入します。特例税率を使うときは、戸籍謄本など続柄を証明する書類の添付が要る場合があります。
提出はe-Taxが楽です。マイナンバーカードがあれば自宅から送信でき、添付書類もデータで出せます。私の実務でも、近年は紙より電子の比率が上がっています。
申告期限・納付期限と延納制度
申告と納付の期限はどちらも翌年3月15日です。一度に払えない場合は、要件を満たせば延納(分割払い)を申請できます。
延納には担保の提供や利子税が伴います。安易に頼るものではなく、まずは納付資金の準備を含めて贈与の計画を立てるべきです。
期限後申告・延滞税・加算税のリスク
期限を過ぎてから申告すると、本来の税額に加えて延滞税や無申告加算税がかかります。意図的に隠していたと判断されれば、さらに重い重加算税の対象になります。
「バレないだろう」は通用しません。少額でも、課税されるなら期限内に出す。これが結局いちばん安く済みます。
2024年改正で税負担はどう変わったか
2024年の改正は、贈与の進め方を根本から見直させる内容でした。柱は2つ。生前贈与加算が3年から7年に延びたこと、そして相続時精算課税に年110万円の基礎控除ができたことです。

生前贈与加算が3年から7年へ延長
暦年課税で贈与した財産は、贈与者が亡くなる前の一定期間分を相続財産に加算します。この期間が3年から7年に延長されました。
つまり、亡くなる直前の駆け込み贈与は効果が薄くなったということ。早く始めるほど有利、という方向に制度が動いています。
相続時精算課税の基礎控除新設の影響
前述のとおり、相続時精算課税に年110万円の基礎控除ができました。この110万円分は相続財産に加算されません。
これにより、相続まで時間が短い高齢の親からの贈与では、相続時精算課税を選んで毎年110万円ずつ渡すほうが有利になるケースが増えました。改正前の常識が変わった部分です。
改正後の有利な贈与の進め方
私が今、相談を受けたときに最初に確認するのは「贈与者の年齢と健康状態」です。7年加算がある以上、若いうちからの暦年贈与は依然有効。
一方、高齢で相続が近い場合は、相続時精算課税の110万円枠を使う選択が現実的になりました。一律の正解はなく、年齢で戦略を切り替えるのが改正後の考え方です。
失敗事例から学ぶ税率計算と贈与の落とし穴

税率を正しく計算しても、贈与そのものが否認されれば意味がありません。実務で実際に追徴された典型例を挙げます。
名義預金・贈与の事実認定で否認された例
よくあるのが名義預金です。親が子名義の口座にお金を入れていたが、通帳も印鑑も親が管理し、子は存在すら知らなかったケース。
これは「贈与が成立していない」と判断され、親の財産として相続税の対象にされます。贈与は、あげる・もらうの双方の合意があって初めて成立する。口座を作っただけでは贈与になりません。
対策は単純です。贈与契約書を作り、受贈者本人が管理する口座へ振り込み、通帳と印鑑も本人が持つ。この3点を揃えるだけで認定リスクは大きく下がります。
みなし贈与(低額譲受・債務免除)の見落とし
贈与のつもりがなくても課税される「みなし贈与」があります。時価より極端に安く財産を譲り受けた場合の差額や、借金を肩代わりしてもらった場合などです。
親子間で土地を相場の半額で売った、といったケースで後から課税されることがあります。身内だから安くしただけ、が通らない場面です。
税務署に把握されるしくみと調査リスク
「現金で渡せば分からない」と考える人がいますが、税務署は不動産の登記情報や保険金の支払調書、預金の動きなど複数の情報を突き合わせています。
特に相続が発生すると、過去の預金の流れまで調べられます。生前の不自然な資金移動はそこで浮かびます。隠す前提の贈与は勧めません。
税理士に相談すべきケースと費用感
自分でやれる範囲もあります。年間110万円以下の暦年贈与なら、契約書を整えれば専門家は不要なことが多い。
一方、一般と特例が混在する計算、相続時精算課税の選択、住宅取得資金の特例、まとまった額の贈与は、間違えると追徴の金額が大きい。こうしたケースは早めに税理士へ。費用は事務所により幅があるので、初回相談で見積もりを確認してから依頼するのが安全です。
贈与税の税率に関するよくある質問(FAQ)
よくある質問
最後に一言。贈与税で損をする人の多くは、税率を間違えるより「贈与の事実を残していない」ことでつまずきます。まずは契約書を1枚作り、本人の口座へ振り込む。今日できるその一歩から始めてください。

