贈与税の計算方法を3手順で解説|速算表と税額シミュレーション

この3手順さえ押さえれば、自分の税額は5分で出せます。実際の計算例つきで、ひとつずつ確認していきましょう。
この記事で分かること:暦年課税の計算3手順/一般税率と特例税率の使い分け/配偶者控除や住宅資金の非課税特例/申告と納付の流れ、そして実務で見落としがちな落とし穴まで。
贈与税の計算を始める前に知っておくこと

いきなり電卓を叩く前に、3つだけ確認します。何に課税されるか、どの制度を使うか、そして何を手元に揃えるか。ここを飛ばすと、後で「そもそも申告不要だった」とか「制度を間違えた」となりがちです。
贈与税がかかるのは、財産をもらった人(受贈者)です。1月1日から12月31日までにもらった合計が110万円を超えると課税の対象になります。
贈与税がかかるもの・かからないもの
現金や預金、不動産、株式など、無償でもらった財産が基本的な課税対象です。一方で、扶養家族の生活費・教育費、常識の範囲の香典やお年玉、お見舞いなどは課税されません。
私が相談でよく聞かれるのは「親が払ってくれた学費も贈与?」というもの。通常必要な教育費なら問題ありません。問題になるのは、もらった金を使わずに貯金や投資に回したケースです。
暦年課税と相続時精算課税の2つの制度
贈与税の計算方法は2つあります。毎年110万円の基礎控除を使う「暦年課税」と、贈与者ごとに2,500万円の特別控除を使い相続時に精算する「相続時精算課税」です。
何もしなければ自動的に暦年課税です。相続時精算課税は申告書を出して「選びます」と意思表示して初めて使えます。ここは後ほど詳しく書きます。
計算に必要な道具と前提条件
用意するのはシンプルです。電卓、その年にもらった財産の一覧(金額と日付)、贈与者との続柄、そして国税庁の速算表。これだけあれば計算は完結します。
前提として確認したいのは「誰から」「いつ」「いくら」もらったか。続柄によって使う税率が変わるので、親からなのか叔父からなのかは必ず控えておいてください。
所要時間と難易度の目安
現金だけの単純な贈与なら、計算自体は5分ほど。難易度は低めです。ただし不動産や株式が混ざると評価額の算定が必要になり、半日仕事になることもあります。
正直に言うと、現金1件だけなら税理士に頼む必要はありません。土地や非上場株が絡む段階で、専門家に相談する価値が出てきます。
暦年課税での贈与税の計算手順
ここが本題です。暦年課税の計算式は「(1年間の贈与財産合計額 − 基礎控除110万円)× 税率 − 控除額」。この一本だけ覚えれば足ります。国税庁もこの式で説明しています。

手順1 1年間にもらった財産を合計する
まず、その年の1月1日から12月31日までにもらった財産をすべて足します。複数の人からもらっていても、もらった側で合算するのがポイントです。
例えば父から600万円、母から400万円なら、合計1,000万円。ここまでで「合計額が出ている」状態になっていれば正解です。
手順2 110万円の基礎控除を引く
合計額から基礎控除110万円を引きます。これが課税価格です。先ほどの1,000万円なら、1,000万円 − 110万円 = 890万円。
もしこの時点で0円以下なら、贈与税はかかりませんし申告も不要です。110万円ちょうどでも非課税です。
手順3 速算表で税率と控除額を当てはめる
課税価格を速算表に当てはめ、税率を掛けて控除額を引きます。税率は課税価格に応じて10%〜55%、控除額は0〜640万円の幅があります。下が基礎控除後の速算表です。
| 課税価格 | 一般税率 | 一般控除額 | 特例税率 | 特例控除額 |
|---|---|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 0円 | 10% | 0円 |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 | 30%〜40% | 90万円〜125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 | 45%〜50% | 175万円〜265万円 |
| 4,500万円以下 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 400万円 | 55% | 640万円 |
課税価格890万円・特例税率なら、890万円 × 30% − 90万円 = 177万円。これが納める贈与税です。ここまで数字が出ていれば、計算は完了しています。
つまずきやすい点と対処
一番多い間違いが、110万円を引く前の金額に税率を掛けてしまうこと。速算表は必ず「基礎控除後」の課税価格で見ます。ここを取り違えると税額が大きく狂います。
うまくいかないときは、式を3つに分けて紙に書いてみてください。①合計、②控除後、③税率計算。段階を分けると間違いに気づきやすくなります。
一般税率と特例税率の使い分けと計算例
贈与税には2種類の税率があります。直系尊属(親・祖父母)から18歳以上の子や孫への贈与は「特例税率」、それ以外は「一般税率」。同じ金額でも税額が変わるので、どちらを使うかは慎重に判断します。

一般贈与財産用の計算例
叔父から500万円もらったケース。続柄が直系尊属でないので一般税率です。課税価格は500万円 − 110万円 = 390万円。
390万円 × 20% − 25万円 = 53万円。これが一般税率での贈与税額です。
特例贈与財産用の計算例
同じ500万円を、20歳の子が父から受け取った場合。特例税率が使えます。課税価格390万円に特例税率を当てると、390万円 × 15% − 10万円 = 48万5,000円。
続柄が違うだけで4万5,000円の差。金額が大きくなるほど、この差は開いていきます。
両方が混在する場合の計算手順
1年のうちに父(特例)と叔父(一般)の両方からもらった場合は、少し手間がかかります。それぞれの割合で按分して計算し、最後に合算する流れです。
手順はこうです。①全部を合算して110万円を引く。②その課税価格を一般税率で計算し、一般贈与分の割合を掛ける。③同じく特例税率で計算し、特例贈与分の割合を掛ける。④両者を足す。割合の按分を忘れて二重に課税しないよう注意してください。
相続時精算課税制度での計算と選び方

まとまった金額を一度に渡したいなら、相続時精算課税が選択肢に入ります。贈与者ごとに2,500万円までの特別控除があり、それを超えた分に一律20%の税率がかかる仕組みです。
年間110万円の基礎控除と2500万円特別控除
2024年以降、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が新設されました。暦年課税の110万円とは別物で、相続時精算課税を選んでも毎年110万円までは申告も加算も不要です。
特別控除2,500万円は、その年の基礎控除110万円を引いた後の額から差し引きます。前年までに控除を使っていれば、残額分だけが使えます。
暦年課税との比較・選ぶ判断基準
どちらを選ぶかは、贈与の目的と相続財産の規模で変わります。両制度の違いを整理しました。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 毎年110万円 | 毎年110万円(2024年〜) |
| 特別控除 | なし | 累計2,500万円 |
| 税率 | 10%〜55%(累進) | 2,500万円超に一律20% |
| 相続時の扱い | 原則加算なし(一部加算あり) | 贈与額を相続財産に加算 |
| 制度の切替 | いつでも | 一度選ぶと暦年に戻れない |
私の実感では、毎年コツコツ110万円ずつ渡して相続財産を減らしたい人は暦年課税。教育資金や住宅資金を一気に渡したい人は相続時精算課税が向きます。ただし後者は一度選ぶと撤回できません。ここは本当に慎重に。
2024年以降の生前贈与加算の改正ポイント
暦年課税には落とし穴があります。相続が発生すると、亡くなる前の一定期間内の贈与は相続財産に足し戻されます。この期間が2024年から段階的に3年から7年へ延長されました。
つまり「相続直前に駆け込みで暦年贈与しても、加算されて節税にならない」ケースが増えます。早めに始めるほど効果が出る、という構造に変わりました。
非課税特例と控除を使った計算例
特例をうまく使えば、税額をゼロにできる場面もあります。代表的なのが配偶者控除、住宅取得等資金、教育資金の3つ。それぞれ要件が細かいので、当てはまるか順に確認しましょう。

贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)の要件と計算例
婚姻20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円が控除できます。合わせて2,110万円まで非課税です。
例えば妻に2,000万円の自宅持分を贈与しても、配偶者控除2,000万円+基礎控除110万円で課税価格は0円。ただし申告は必要です。控除を使う以上、税額0でも申告書は出してください。
住宅取得等資金の非課税特例の上限額
親や祖父母から住宅取得資金をもらう場合の特例です。2024年1月〜2026年12月の贈与では、良質な住宅で1,000万円、その他の住宅で500万円までが非課税になります。
床面積は50㎡以上が原則で、受贈者の所得が1,000万円以下なら40㎡以上でも対象です。この床面積要件、意外と見落とされます。図面で必ず確認してください。
教育資金・結婚子育て資金の非課税特例
教育資金や結婚・子育て資金にも、一括贈与の非課税特例があります。金融機関で専用口座を作り、使途を証明する書類を提出する仕組みです。
注意したいのは、使い切れずに残った分や、期間内に使われなかった分は課税対象になる点。「とりあえず非課税枠を埋める」発想だと、後で精算課税が発生することがあります。実際に使う見込みがあるかで判断してください。
計算後の申告と納付の進め方
税額が出たら、次は申告と納付です。暦年課税の贈与税は、もらった翌年の2月1日から3月15日までに申告書を提出し、納税します。

申告期限・納付期限と必要な添付書類
申告書は贈与税の申告書(第一表)が基本。特例を使う場合は、その特例ごとに添付書類が増えます。
| 使う制度・特例 | 主な添付書類 |
|---|---|
| 特例税率(直系尊属) | 戸籍謄本など続柄が分かる書類 |
| 配偶者控除 | 戸籍謄本・登記事項証明書・住民票 |
| 住宅取得等資金 | 契約書の写し・登記事項証明書・所得証明 |
| 相続時精算課税 | 相続時精算課税選択届出書・戸籍謄本 |
期限後に「続柄の戸籍を取り忘れていた」と慌てる人が多い。役所の書類は取得に時間がかかるので、2月に入る前に集め始めるのが安全です。
申告書の書き方と納付方法
申告書は、もらった財産の種類・金額・贈与者を記入し、速算表で計算した税額を書き込む流れです。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、金額を入れるだけで税額が自動計算されます。
納付は金融機関の窓口、コンビニ(30万円以下)、e-Taxによる電子納税、クレジットカードなどから選べます。期限までに納付が完了している状態がゴールです。
払わなかった場合のペナルティ
申告も納付もしないと、ペナルティが積み重なります。期限内に申告しなければ無申告加算税、納付が遅れれば延滞税、意図的に隠せば重加算税。重加算税は最も重く、本来の税額に大きく上乗せされます。
「バレないだろう」は通用しません。後述の通り、税務署は資金の動きを把握する手段を持っています。
計算でつまずく人が見落としがちな現場の注意点

15年この仕事をしてきて、計算ミスより怖いのは「そもそも贈与と認められていない」パターンだと感じます。名義預金、契約書の不備、評価額の取り違え。実務で揉める3点を挙げます。
名義預金と税務署にばれる仕組み
子名義の口座にお金を入れていても、通帳と印鑑を親が管理し、子が自由に使えないなら「名義預金」とみなされます。これは贈与として成立しておらず、親の財産のまま。相続時に課税されます。
税務署は相続調査の際、預金の流れや過去の入出金を細かく追います。大きな資金移動は把握されている前提で動くのが現実的です。
贈与契約書の作成とトラブル防止
贈与は口約束でも成立しますが、後で証明できないと税務調査で苦労します。私は必ず契約書を作るよう勧めています。「いつ・誰が・誰に・いくら・どの財産を」を書き、双方が署名押印するだけで十分です。
毎年同額を機械的に渡すと「最初からまとめて贈与する約束だった」と疑われることがあります。金額や時期に変化をつける、その都度契約書を作る、といった工夫で防げます。
財産種類別の評価方法の落とし穴
現金は額面どおりですが、不動産や株式は評価額の算定が必要です。土地は路線価方式、建物は固定資産税評価額、上場株式は贈与日前後の株価をもとに評価します。
非上場株式の評価は特に厄介で、自己流の計算が一番危ない領域。ここは素直に税理士へ。私自身、評価方法の選び方ひとつで税額が大きく動く場面を何度も見てきました。
贈与税の計算に関するよくある質問
相談現場で繰り返し聞かれる質問を、計算式と実務の両面からまとめました。

よくある質問
まずは去年もらった金額を紙に書き出すところから。110万円を超えているなら、この記事の3手順をそのまま当てはめれば、自分の税額は今日のうちに出せます。判断に迷う財産が混ざっていたら、その一件だけでも税理士に確認しておくと安心です。
