贈与税の税率まるわかり|速算表と計算方法・非課税の特例を解説

私は税理士として15年、相続や贈与の現場を見てきました。この記事では速算表の読み方から実際の計算例、非課税にできる特例、申告の流れまで、自分の税額をその場で出せるように整理します。
正直、税率表だけ見ても「自分はどっち?」と迷う人がほとんどです。そこも判断基準をはっきり書きます。
贈与税の税率とは?基本の仕組みをわかりやすく解説

贈与税は、人から財産をもらったときにかかる税金です。税率を理解する前に、まず「どこからどこまでに課税されるのか」を押さえると、後の計算がぐっと楽になります。
贈与税とはどんな税金か
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額に対してかかります。これを暦年課税と呼びます。
課税されるのは「もらった人(受贈者)」です。お金を渡した側ではなく、受け取った側が申告して納めます。ここを勘違いしている方、実務でも本当に多いです。
税率は「一般税率」と「特例税率」の2種類
暦年課税の税率は、贈与する人とされる人の関係によって2区分に分かれます。国税庁の区分では、一定の直系尊属(親・祖父母など)からの贈与に使う「特例税率」と、それ以外に使う「一般税率」です。
どちらも最高税率は55%ですが、その55%に届くまでの金額の刻みが違います。同じ金額をもらっても、特例税率のほうが税負担は軽くなります。
暦年課税の年110万円の基礎控除
暦年課税には、年間110万円の基礎控除があります。1年間にもらった合計が110万円以下なら、贈与税はかからず、申告も不要です。
注意したいのは、この110万円は「もらった人ごと」の枠だという点。複数の人から合計150万円もらえば、相手が誰であっても課税対象です。
贈与税の速算表と税率の見方
ここが記事の核心です。税率は「基礎控除後の課税価格」、つまり110万円を引いた後の金額にかかります。速算表には税率と一緒に「控除額」があり、これを使うと一発で税額が出せます。

一般贈与財産用の税率表
特例税率の対象外の贈与に使うのが一般税率です。たとえば夫婦間や兄弟間、親から成人前の子への贈与などがこちらになります。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
特例贈与財産用の税率表
親や祖父母といった直系尊属から、その年の1月1日時点で18歳以上の子や孫への贈与は、こちらの特例税率を使います。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
2つの表を見比べると、たとえば400万円以下の枠で一般は20%、特例は15%。同じ金額でも刻みがずれているのが分かります。
どちらの税率が適用されるかの判断基準
判断はシンプルで、「直系尊属から、18歳以上の子・孫への贈与」かどうか。これに当てはまれば特例税率、外れれば一般税率です。
年齢の判定基準は「贈与を受けた年の1月1日時点」です。誕生日が3月で、1月1日時点ではまだ17歳なら、その年の贈与は一般税率になります。ここでつまずく相談、毎年あります。
贈与税の計算方法と具体例
計算式は1本だけ覚えれば足ります。「(贈与額 − 110万円)× 税率 − 控除額」。これに速算表の数字を当てはめるだけです。

一般贈与財産の計算例
国税庁の計算例を引きます。500万円を一般税率で受け取った場合です。
(500万円−110万円)×20%−25万円=53万円(国税庁 No.4408 より)
基礎控除後が390万円なので「400万円以下・税率20%・控除額25万円」の行を使います。税額は53万円です。
特例贈与財産の計算例
同じ500万円でも、親から18歳以上の子への贈与なら特例税率です。基礎控除後390万円は「400万円以下・税率15%・控除額10万円」。
計算すると(500万円−110万円)×15%−10万円=48万5千円。一般税率より4万5千円安くなります。同じ金額でこの差です。
両方の計算が必要な場合の手順
1年の間に「親から(特例)」と「親戚から(一般)」の両方をもらうことがあります。この場合、計算は少し手間です。
手順は、まず全額を合計して110万円を引き、一度は全額を一般税率で、もう一度は全額を特例税率で計算します。それぞれ財産の割合で按分し、足し合わせた金額が最終的な税額になります。実務では計算ソフトを使いますが、仕組みを知っておくと申告書のチェックがしやすいです。
贈与税が非課税になるケースと特例

税率を知ると同時に、そもそも課税されないルートを知っておくと得です。110万円以外にも非課税の枠はいくつもあります。代表的なものを整理します。
年110万円以下・生活費や教育費の贈与
まず年110万円以下は非課税。これは前述のとおりです。
加えて、扶養義務者からの生活費や教育費で、必要な都度渡すものは課税されません。仕送りや学費の振込がこれにあたります。ただし、まとめて渡して預金にしてしまうと課税対象になり得るので、都度というのが肝です。
配偶者への居住用財産の贈与
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用の不動産またはその購入資金を贈与した場合、基礎控除110万円とは別に最大2,000万円が控除される特例があります。いわゆる「おしどり贈与」です。
正直、この特例は使いどころを選びます。配偶者はもともと相続でも有利な扱いがあるため、安易に使うと逆に損なケースも。私は事前のシミュレーション必須だと考えています。
住宅取得等資金・教育資金・結婚子育て資金の一括贈与
親や祖父母から、住宅取得、教育、結婚・子育ての資金を受け取る場合、一定額まで非課税にできる特例があります。いずれも要件や限度額、適用期限が細かく定められています。
特に教育資金の一括贈与は2026年3月末で終了予定です。検討している方は期限を意識して動いてください。限度額や併用の可否は年度で変わるため、申告前に最新情報を必ず確認します。
相続時精算課税制度の活用
原則18歳以上の子や孫が、60歳以上の親や祖父母から贈与を受ける場合に選べるのが相続時精算課税です。累計2,500万円まで贈与税がかからず、超えた分に一律20%の税率がかかります。
名前のとおり、贈与した財産は相続のときに精算(持ち戻し)されます。次の章で暦年課税との選び方を詳しく書きます。
暦年課税と相続時精算課税はどちらを選ぶべきか
ここは相談で一番多いテーマです。2024年の改正で両制度の使い勝手が変わり、判断のポイントもずれました。私の実務感覚も交えて整理します。

両制度のメリット・デメリット比較
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年110万円 | 年110万円(2024年改正で新設) |
| 特別控除 | なし | 累計2,500万円 |
| 税率 | 10〜55%の超過累進 | 2,500万円超に一律20% |
| 相続時の持ち戻し | 贈与者死亡前一定期間分 | 制度利用後の贈与は原則すべて |
| 一度選ぶと | 毎年自由に使える | 暦年課税に戻せない |
相続時精算課税の最大の注意点は「一度選ぶと暦年課税に戻れない」こと。同じ贈与者からの贈与は、以後ずっとこの制度で計算します。ここは慎重に。
2024年改正後の年110万円基礎控除
2024年1月から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が付きました。これが大きい。
この110万円分は相続時に持ち戻されず、申告も不要です。毎年コツコツ渡すなら、改正後の相続時精算課税はかなり使いやすくなった、というのが私の率直な評価です。
生前贈与加算(7年ルール)の影響
暦年課税で渡した財産は、贈与者が亡くなる前の一定期間分が相続財産に加算されます。この期間が、改正で3年から7年へ段階的に延びました。
つまり「亡くなる直前に暦年贈与で節税」という手は使いにくくなりました。長生きを前提に早めから動くか、相続時精算課税の110万円枠を使うか。高齢の親世代では、後者を選ぶケースが私の周りでも増えています。
贈与税の申告・納付の流れと注意点
課税対象になったら申告が必要です。期限を1日でも過ぎるとペナルティが付きます。流れを具体的に押さえておきましょう。

申告書の書き方・必要書類・提出先・申告期限
申告期限は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで。提出先は、もらった人(受贈者)の住所地を管轄する税務署です。
| 項目 | 内容 | ||
|---|---|---|---|
| 申告する人 | 財産をもらった人(受贈者) | 対象期間 | その年の1月1日〜12月31日の贈与 |
| 申告期限 | 翌年2月1日〜3月15日 | ||
| 提出先 | 受贈者の住所地の税務署 | ||
| 主な書類 | 申告書、本人確認書類、特例利用時は戸籍・登記事項証明書など |
特例税率や各種特例を使うときは、続柄を証明する戸籍など追加書類が要ります。直前に慌てないよう、年明けには集め始めるのがおすすめです。
納付方法と延納の制度
税額は原則、申告期限までに金銭で一括納付します。窓口、口座振替、e-Taxやクレジット納付など方法は複数あります。
一括が難しい場合、一定の要件を満たせば最長5年の延納が使えます。ただし利子税がかかるので、できれば一括で払い切るのが得策です。
贈与契約書の作り方と証拠の残し方
贈与は口約束でも成立しますが、税務調査では「本当に贈与があったか」が問われます。私が必ず勧めるのが贈与契約書です。
日付、贈与する人ともらう人の氏名、金額、双方の署名押印を残す。そして現金手渡しではなく、銀行振込で記録を残す。この二つだけで、後の「言った言わない」をほぼ防げます。
知らないと損するみなし贈与・税務調査のリスク

贈与税で怖いのは、本人に贈与の自覚がないのに課税される「みなし贈与」です。実務で揉めるパターンを具体的に挙げます。
名義預金・名義保険で問題になるケース
親が子名義の口座にお金を貯めていても、通帳や印鑑を親が管理し、子が存在を知らなければ、それは子のものとは認められません。これが名義預金です。
相続の税務調査で最も指摘されるのがここ。せっかく贈与したつもりが、相続財産に戻されて課税される。だからこそ、前述の贈与契約書ともらう側の口座管理が効いてきます。
低額譲渡・借金免除などのみなし贈与
時価より著しく安く財産を譲ったり、借金を肩代わり・免除してもらったりすると、その差額が贈与とみなされることがあります。
親子間で「相場より大幅に安く家を売る」のは典型例。安くした分が贈与税の対象になり得ます。身内だから大丈夫、は通用しません。
無申告・申告漏れのペナルティと時効
期限内に申告しないと、本来の税額に加えて無申告加算税や延滞税が課されます。意図的に隠せば、さらに重い重加算税の対象です。
「時効まで黙っていれば」と考える人がいますが、おすすめしません。贈与契約書もなく証拠を残していないと、贈与自体が否認されて相続時にまとめて課税される、という最悪のパターンに陥りがちです。
贈与税のよくある質問(FAQ)
相談現場で繰り返し聞かれる質問を、私の言葉でまとめます。

よくある質問
最後に一つ。贈与は「渡した時点」で制度が決まり、後から最適化できないことが多いです。迷うなら動く前に税額を試算する。これが一番の節税です。
