贈与税がかからない方法8選|非課税の条件と手順を解説

この記事では、年間110万円の基礎控除をはじめとする8つの非課税の使い方を、私が現場で見てきた失敗例も交えて整理します。2024年改正で何が変わったかも押さえます。
読み終えれば、自分のケースで使える制度がどれかが分かり、贈与契約書の作成から申告までの手順をそのまま進められます。
贈与税の基本的な仕組みと計算方法

非課税の話に入る前に、土台を押さえておきます。ここを飛ばすと「なぜ110万円なのか」がぼやけるからです。
贈与税とは何か
贈与税は、個人から財産をタダでもらったときにかかる税金です。もらった人(受贈者)が払います。
国税庁のタックスアンサーでは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額が110万円以下なら贈与税はかからない、と明記されています。
一般税率と特例税率の違い
暦年課税の税率には2種類あります。一般税率と特例税率です。
特例税率は、18歳以上の人が父母や祖父母など直系尊属からもらった場合に使えます。同じ金額でも一般税率より負担が軽くなる設計です。
正直、親子・祖父母から子孫への贈与なら特例税率になるケースが大半です。一般税率が出てくるのは、夫婦間や兄弟間、他人からの贈与のときと覚えておくと混乱しません。
贈与税の計算例で確認する
計算の流れはシンプルです。「もらった額 −110万円」に税率をかけ、控除額を引く。それだけです。
たとえば年間110万円ちょうどなら、基礎控除で全額が引かれ、税額はゼロ。申告も不要です。これが一番手軽な非課税の形になります。
110万円を1円でも超えると申告義務が生じます。「ちょうど110万円」と「111万円」では、手間がまったく変わる。ここは要注意です。
贈与税がかからない8つの方法
ここが本題です。国税庁が非課税として認めている枠を中心に、実務でよく使う順に並べます。すべて出典付きで確認できるものだけを挙げました。

| 方法 | 非課税の枠 | 対象・条件 |
|---|---|---|
| 年間110万円以下の暦年贈与 | 年110万円 | 誰からの贈与でも合計で判定 |
| 生活費・教育費の都度贈与 | 必要な都度・通常必要な範囲 | 扶養義務者から、貯蓄に回さないこと |
| 住宅取得等資金の贈与 | 一定額(要件あり) | 直系尊属から、住宅取得に充てる |
| 配偶者控除(おしどり贈与) | 2,000万円 | 婚姻20年以上、居住用不動産または取得資金 |
| 教育資金の一括贈与 | 1,500万円(学校外500万円) | 2026年3月末で終了予定 |
| 相続時精算課税制度 | 累計2,500万円+年110万円 | 直系尊属から、選択制 |
| 障害者への信託 | 非課税枠あり | 特定障害者扶養信託契約による |
| 公益目的・弔慰金など | 社会通念上相当な範囲 | 香典・見舞い・寄附など |
年間110万円以下の基礎控除(暦年贈与)
もっとも使われる王道です。受贈者1人あたり、年110万円までなら無税で申告も不要。
ポイントは「もらう側」で合算する点です。父から100万円、母から100万円もらえば合計200万円で、110万円を超えます。あげる側ではなく、もらう側でカウントする。ここを誤解している人を本当に多く見てきました。
生活費・教育費・住宅取得等資金の非課税
扶養義務者から受け取る生活費・教育費は、通常必要と認められる範囲で非課税です。仕送りや学費の都度の支払いが典型例。
ただし国税庁は「必要な都度、直接これらに充てるためのもの」に限ると釘を刺しています。名目だけ教育費にして、実際は受贈者が貯金や投資に回すと対象外。これは否認されやすい論点です。
住宅取得等資金については、直系尊属からの贈与のうち一定要件を満たすものを課税価格に算入しない制度があります。新築・取得・増改築の時期や床面積など、細かい要件がある点に注意してください。
配偶者控除や相続時精算課税制度の活用
婚姻期間20年以上の夫婦間では、居住用不動産またはその取得資金について2,000万円まで非課税にできる特例があります。いわゆる「おしどり贈与」で、一生に一度だけ。
相続時精算課税制度は、累計2,500万円までの特別控除があり、超えた分にだけ一律20%の贈与税がかかる仕組みです。名前のとおり、相続時に精算します。
障害者控除・公益目的・弔慰金などの非課税
特定障害者を受益者とする扶養信託には非課税枠があります。生活の安定を目的とした制度です。
香典・花輪代・年末年始の贈答・祝物・見舞いなど、社会通念上相当と認められる金品も非課税。国税庁が非課税財産として挙げています。葬儀の香典に贈与税を心配する必要はありません。
2024年改正で変わった点と選び方
ここ数年でルールが大きく動きました。正直、改正を知らずに昔のやり方を続けている人が損をしています。要点は2つです。

相続時精算課税の年間110万円基礎控除の新設
2024年分以後、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されました。年110万円以下なら贈与税がかからず、しかも相続税の課税対象にもならない。
これは大きい。従来の相続時精算課税は「贈与した分はすべて相続財産に戻る」のが弱点でした。改正で、年110万円分は戻らなくなった。私自身、相談者へのおすすめの仕方が変わりました。
生前贈与加算が3年から7年へ延長された影響
暦年贈与には「相続開始前の一定期間にした贈与は、相続財産に加算する」というルールがあります。この期間が3年から7年へ段階的に延長されました。
つまり、亡くなる直前の駆け込み贈与は効果が薄れます。暦年贈与で効かせたいなら、早く始めて長く続けるしかない。元気なうちから動くのが鉄則です。
暦年贈与と相続時精算課税はどちらを選ぶべきか
よく聞かれますが、答えは「年齢と財産規模による」です。判断の目安を表にしました。
| 観点 | 暦年贈与が向く | 相続時精算課税が向く |
|---|---|---|
| 贈与する人の年齢 | 若い・健康(長く続けられる) | 高齢(残り期間が短い) |
| 1回の贈与額 | 毎年110万円前後をコツコツ | まとまった額を早く渡したい |
| 生前贈与加算 | 直前7年は加算される | 年110万円分は加算されない |
| 手続き | 原則申告不要(110万円以下) | 初回に届出が必要・以後固定 |
注意点が一つ。相続時精算課税は一度選ぶと、同じ贈与者からの贈与で暦年贈与に戻せません。気軽に選ぶ制度ではないので、迷うなら税理士に試算してもらってから決めてください。
非課税で贈与する手順とやり方

ここからは実務です。所要時間は、契約書の作成と振込で1時間ほど。申告が必要な場合は別途。難易度は、110万円以下の暦年贈与なら低めです。
必要なものは、贈与契約書、双方の印鑑、受贈者名義の銀行口座、この3つだけ。順番に進めます。
非課税枠の確認と贈与計画の立て方
手順1。誰に、いくら渡すかを決めます。受贈者ごとに年110万円までかを確認。複数の人からもらう予定があるなら、もらう側で合計します。
ここまでできていれば正しい状態:受贈者ごとに「今年いくら受け取るか」が紙に書き出せている。
贈与契約書の作成と確定日付の取り方
手順2。贈与契約書を作ります。記載するのは、贈与日・贈与する人と受け取る人の氏名住所・金額・渡す方法(振込など)。双方が署名押印します。
手順3。証拠力を高めたいなら、公証役場で確定日付をもらいます。1通あたり数百円で、その日に契約書が存在したことを公的に示せる。後の税務調査で効きます。
つまずきやすいのは「契約書を毎年作るのが面倒だから」と、最初に10年分まとめて約束してしまうこと。これは定期贈与とみなされる典型です。面倒でも毎年1枚ずつ作ってください。
ここまでできていれば正しい状態:今年分の契約書1枚に、双方の署名押印と日付が入っている。
贈与税申告書の提出手順
手順4。110万円以下で暦年贈与なら、申告は不要です。手順5へ飛んで構いません。
110万円を超えた場合や、配偶者控除・相続時精算課税などの特例を使う場合は申告が必要。贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地の税務署へ贈与税申告書を出します。特例を使うときは申告自体が適用の条件です。出し忘れると非課税が受けられません。
うまくいかないときの対処と完了の目安
うまくいかないとき。振込の名義や、契約書の金額と実際の入金額がズレていると、後で説明に困ります。必ず契約書どおりの金額を、受贈者本人の口座へ振り込んでください。
この手順どおりに進めれば、「契約書あり・本人口座へ入金あり・必要なら申告済み」という、否認されにくい贈与が完了します。ここまで揃えば一つの区切りです。
やってはいけない贈与と税務調査・否認リスク
非課税の制度を使っても、形が伴わないと否認されます。私が実務で「これは危ない」と止めてきたパターンを挙げます。

名義預金とみなされる失敗例
いちばん多いのが名義預金です。子や孫の名義で口座を作り、親がせっせと入金。でも通帳も印鑑も親が管理している。
これは「名義が違うだけで、実質は親の財産」と判断されます。贈与は成立していない扱いになり、相続時にまるごと相続財産へ。子ども本人が口座を管理し、自由に使える状態にしておくことが分かれ目です。
定期贈与と認定されないための注意点
毎年同じ日に、同じ金額を、同じ相手へ。これが続くと「最初からまとまった額を分割で贈与する約束だった」とみなされる恐れがあります。定期贈与の認定です。
対策はシンプル。金額や時期を少し変える、毎年その都度契約書を作る、ときには贈与しない年を作る。私はよく「機械的にやらないこと」と伝えています。
申告漏れ・無申告のペナルティ(加算税・延滞税)
特例を使うのに申告を忘れると、非課税が受けられないうえ、本税に加算税や延滞税が上乗せされます。無申告は特に重い扱いです。
具体的な税率は状況で変わるため、ここでは断定しません。ただ実務感覚として、「払うべき税金+ペナルティ+精神的負担」で、最初に正しく申告するより必ず損です。迷ったら出す。これに尽きます。
現金以外の贈与と他の資産移転手段との比較
贈与は現金だけではありません。不動産・株式・生命保険でもできます。ただ評価方法が違い、ここでつまずく人が多い。

不動産・株式・生命保険の評価と注意点
不動産は時価ではなく相続税評価額(路線価など)で評価します。株式は上場株なら原則として複数時点の終値などから評価。生命保険は契約形態によって贈与税・相続税・所得税のどれになるかが変わります。
正直、現金以外は素人判断が危険です。とくに不動産の贈与は登録免許税や不動産取得税もかかるため、「贈与税は安くても、他の税で割高だった」というケースを何度も見てきました。
NISA・iDeCoなどとの組み合わせ
贈与した現金を、受贈者がNISAやiDeCoで運用する組み合わせもあります。あくまで贈与後は受贈者本人のお金として運用するのが前提です。
ここでも名義預金の落とし穴に注意。「あげたお金を親が運用指図する」では贈与が崩れます。渡したら手を離す。これが守れる人にだけ勧めます。
海外居住者・国外財産の課税ルール
贈与する人・もらう人の住所や国籍、財産の所在で、課税範囲が変わります。海外居住者がからむと一気に複雑になる領域です。
ここは一般論で語れません。国外財産や海外移住の予定があるなら、自己判断せず、必ず国際税務に対応した税理士へ。失敗すると取り返しがつきません。
専門家に相談すべきタイミングと費用の目安

全部を自分でやる必要はありません。むしろ、ここから先は任せたほうがいいという線引きがあります。
税理士に相談すべきケース
110万円以下の暦年贈与だけなら、契約書を作って振り込むだけで足ります。自分でできる範囲です。
一方、相続時精算課税や配偶者控除などの特例を使う、不動産や株式を贈与する、財産総額が大きく相続税まで絡む。このどれかに当てはまるなら、最初から相談したほうが結果的に安く済みます。
相談・依頼費用の考え方
費用は事務所や案件の難易度で幅があります。具体的な金額は事務所ごとに違うため、ここで一律の数字は出しません。
私の考えを率直に言うと、初回相談は無料か数千円〜の事務所が多いので、まず相談だけしてみるのが得策です。否認されて払う税金とペナルティに比べれば、専門家費用は安い保険だと思っています。
よくある質問(FAQ)
よくある質問
最後に一言。贈与税がかからない方法は「制度を選ぶ」より「形をきちんと残す」ほうがずっと大事です。今日できる一歩は、今年分の贈与契約書を1枚作ること。そこから始めてください。

