贈与税がかからない方法8選|非課税枠と手順を税制改正対応で解説

私は相続・贈与専門の税理士として実務歴15年。年110万円の暦年贈与から配偶者控除、住宅資金特例まで、現場で実際に使った方法を整理しました。
この記事で分かるのは、(1)使える8つの非課税策と上限額、(2)契約書作成から申告までの手順、(3)2024年改正の影響、(4)税務署に否認される失敗事例と防ぎ方です。自分のケースで何から着手すべきかが見えてきます。
贈与税がかからない方法の全体像と難易度

まず全体像を押さえます。贈与税がかからない方法は、難易度も手間もバラバラ。一番簡単なのは年110万円以下の暦年贈与で、申告すらいりません。
そもそも贈与税とは何か
贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。もらった人(受贈者)が払います。
ただし国税庁が定める基礎控除があり、1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った額の合計が110万円以下なら非課税で、申告も不要です。
非課税にする所要時間と必要なもの
暦年贈与なら、振込1回で完了します。所要時間は実質10分。配偶者控除や住宅資金特例を使う場合は、登記や申告が絡むので数週間みておくと安心です。
| 方法 | 難易度 | 目安の手間 | 必要なもの |
|---|---|---|---|
| 年110万円以下の暦年贈与 | 低 | 振込1回・10分 | 通帳・できれば贈与契約書 |
| 生活費・教育費の都度贈与 | 低 | 都度の支払い | 直接充てた記録・領収書 |
| 配偶者控除(最大2,000万円) | 中 | 数週間 | 婚姻20年の証明・登記・申告 |
| 住宅取得等資金(最大1,000万円) | 中 | 数週間 | 契約書・申告書 |
| 相続時精算課税制度 | 中 | 申告必須 | 届出書・申告書 |
自分に合う方法を選ぶ早わかり診断
どれを選ぶか迷ったら、目的で絞ると早いです。私が相談現場で使い分けている目安を表にしました。
| あなたの状況 | 向いている方法 | 上限の目安 |
|---|---|---|
| 毎年コツコツ渡したい | 暦年贈与 | 年110万円 |
| 孫の学費を出したい | 生活費・教育費の都度贈与/教育資金一括 | 都度は実費/一括最大1,500万円 |
| 長年連れ添った配偶者に自宅を | 配偶者控除 | 最大2,000万円 |
| 子の家購入を援助したい | 住宅取得等資金の贈与 | 最大1,000万円 |
| まとまった額を今渡したい | 相続時精算課税制度 | 累計2,500万円 |
贈与税がかからない8つの方法
ここから具体策です。国税庁とチェスター税務の情報で確認した、非課税にできる8つの方法を整理します。上限額と条件を間違えると課税されるので、数字をしっかり押さえてください。

年間110万円以下の暦年贈与
最も基本で、最も使われる方法です。1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下なら非課税。申告もいりません。
注意点は「受け取る側」で110万円を判定すること。父から110万円、母から110万円を同じ年にもらうと、合計220万円で課税対象です。
生活費・教育費・住宅取得等資金の贈与
扶養義務者から、生活費や教育費を必要な都度もらう分は非課税です。仕送りや学費の支払いがこれにあたります。
ポイントは「必要な都度」「直接その費用に充てる」こと。まとめて渡して預金にしてしまうと、生活費とは認められず課税されます。
住宅取得等資金の贈与は、子や孫の家購入資金として最大1,000万円まで非課税にできます(2025年の条件)。これは別枠で大きいので、家を買うタイミングなら検討価値が高い。
夫婦間の配偶者控除と相続時精算課税制度
婚姻期間20年以上の夫婦なら、居住用不動産またはその購入資金を最大2,000万円まで非課税で贈与できます。通称「おしどり贈与」。一生に一度だけ使えます。
基礎控除110万円と併用できるので、実質2,110万円まで動かせます。ここは後の章で詳しく触れます。
相続時精算課税制度は、60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で、累計2,500万円まで贈与税がかからない仕組み。ただし相続のときに精算されるので「課税の先送り」に近い性格です。
障害者控除・公益目的・弔慰金などの非課税
残りの3つはケースが限られますが、該当すれば効果は大きい。
| 方法 | 内容・上限 | 期限など |
|---|---|---|
| 特定障害者への贈与 | 区分に応じ最大3,000万円または6,000万円まで非課税 | 信託契約による |
| 教育資金の一括贈与 | 30歳未満の子・孫へ最大1,500万円(習い事等500万円) | 令和8年(2026年)3月31日まで |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 18歳以上50歳未満へ最大1,000万円(結婚関連300万円) | 令和9年(2027年)3月31日まで |
公益目的の寄附や、社会通念上相当な弔慰金・災害見舞金も非課税です。こちらは金額より「社会通念上相当か」が判定の軸になります。
非課税にする手順とやり方
制度を知っても、手順を踏まないと意味がありません。ここからは暦年贈与を例に、実際の流れを4ステップで示します。所要時間は確認から振込まで、慣れれば30分ほど。

手順1:非課税枠を確認する
その年に、誰からいくらもらうかを書き出します。受け取る側の合計が110万円以下なら、暦年贈与で非課税です。
ここまでで「合計額が110万円以下」になっていれば正しい状態です。超えるなら、翌年に分けるか、配偶者控除など別枠を検討します。
手順2:贈与契約書を作成する
金額・贈与日・あげる人ともらう人の氏名を書き、双方が署名押印します。書式は決まっていませんが、日付と当事者が明確であることが大事。
110万円以下でも作成をおすすめします。理由は後述の「名義預金」否認を防ぐため。契約書があると「いつ・誰が・いくら」を客観的に示せます。
うまく書けないときは、年ごとに1枚ずつ作るのが安全です(毎年同じ契約書を1通にしない)。
手順3:通帳・振込で証拠を残す
現金手渡しは避け、銀行振込にします。あげる人の口座から、もらう人本人が管理する口座へ振り込む。これで通帳に記録が残ります。
通帳・印鑑・キャッシュカードを、もらった本人が管理していれば正しい状態です。親が子名義の通帳を持ったままだと、名義預金とみなされます。
手順4:必要なら贈与税申告書を提出する
110万円以下の暦年贈与なら申告不要です。配偶者控除・住宅資金特例・相続時精算課税を使う場合は、110万円以下でも申告が必須。
申告期限は贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日。これで「贈与税をかけずに財産を渡す」手続きが完了します。
2024年からの税制改正で変わった点

2024年(令和6年)から、暦年課税と相続時精算課税のルールが変わりました。生前贈与で相続税対策をする人には影響が大きい。ここは見落とすと損します。
生前贈与加算が7年に延長
相続が発生したとき、亡くなる前の一定期間の贈与は相続財産に加算されます。この期間が、従来の3年から7年へ延長されました。
つまり、亡くなる7年以内の暦年贈与は相続税の対象に戻る。早めに贈与を始めるほど有利、という構図に変わりました。
相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設
相続時精算課税制度に、年110万円の基礎控除が新たに設けられました。この110万円分は、相続時に加算されません。
これは正直、大きな改正です。従来は精算課税を選ぶと暦年の110万円が使えませんでしたが、改正後は精算課税の中でも毎年110万円を非課税で動かせる。
改正で有利・不利になる人
私の見方を率直に書きます。長生きが見込める若いうちから贈与する人は、暦年贈与のままで十分有利。
一方、高齢で相続まで7年を切りそうな人は、暦年贈与の加算リスクが上がったため、年110万円基礎控除のついた相続時精算課税への切り替えを検討する価値が出てきました。
【独自】否認される失敗事例と証拠の残し方
ここが実務で一番相談が多く、競合記事が薄い部分です。制度を正しく使ったつもりでも、証拠がないと税務署に否認されます。私が現場で見てきた典型的な失敗を挙げます。

名義預金とみなされるケース
一番多い失敗がこれ。親が子や孫の名義で口座を作り、コツコツ入金していたケースです。
通帳も印鑑も親が管理し、子は口座の存在すら知らない。これだと贈与は成立しておらず「親の財産(名義預金)」と判断され、相続税の対象になります。
防ぐ鍵は、もらった本人が口座を管理し、自由に使える状態にしておくことです。
定期贈与とみなされるリスク
毎年同じ日に同じ額を贈与し続けると、「最初からまとまった額を分割で贈る約束だった」とみなされ、合計額に課税される恐れがあります。これが定期贈与です。
対策は、毎年その都度に契約書を作る、金額や時期に変化をつける、といった工夫。実務では年ごとに別々の契約書を残すのが鉄則です。
通帳・契約書で証拠を整える実務
否認を防ぐエビデンスは、突き詰めると3点です。私が依頼者に必ず残してもらうものを表にします。
| 証拠 | 目的 | ポイント |
|---|---|---|
| 贈与契約書(年ごと) | 贈与の意思と日付を示す | 双方の署名押印・年ごとに別作成 |
| 銀行振込の記録 | 資金移動を客観的に証明 | 手渡しでなく振込・通帳に残す |
| 受贈者本人の口座管理 | 名義預金の否定 | 通帳・印鑑・カードを本人が保管 |
この3点がそろっていれば、税務調査でもまず崩れません。逆に、どれか欠けると一気にリスクが上がります。
制度の併用と相続税対策としての位置づけ
非課税制度は単独で使うより、組み合わせると効果が増します。ただし併用できる組み合わせと、できない組み合わせがある。ここを間違える人が本当に多い。

暦年贈与と相続時精算課税の併用可否
同じ贈与者からの贈与で、暦年課税と相続時精算課税を併用することはできません。一度精算課税を選ぶと、その人からの贈与は以後ずっと精算課税です。
ただし父からは暦年、母からは精算課税、というように贈与者ごとに分ければ使い分けられます。
配偶者控除と110万円控除の組み合わせ
おしどり贈与の最大2,000万円は、基礎控除110万円と併用できます。合わせて最大2,110万円まで非課税で配偶者に動かせる。
婚姻20年以上で自宅を渡したいなら、ここは積極的に使うべきです。一生に一度しか使えないので、タイミングは慎重に。
あえて少額の贈与税を払う戦略
意外に知られていませんが、あえて110万円を超えて贈与し、少額の贈与税を払う方が得になる場合があります。
理由は相続税率との比較。将来の相続税率が高い人なら、低い贈与税率の範囲で多めに渡しておく方が、トータルの税負担が下がることがあります。
これは個別の財産額次第なので、ここは税理士の試算が要る領域です。私も依頼を受けたら、まず相続税のシミュレーションから入ります。
無申告・時効・ペナルティと専門家への相談

最後に、やってはいけないことの話です。申告が必要なのに放置すると、加算税や延滞税が重くのしかかります。
贈与税の時効と無申告のリスク
贈与税には時効がありますが、「ばれなければ得」と考えるのは危険です。名義預金のように贈与が成立していないとされれば、そもそも時効の起算点が動きません。
相続税の税務調査で過去の資金移動が洗い出され、まとめて課税されるケースを何度も見てきました。隠すより、正しく非課税枠を使う方がはるかに安全です。
加算税・延滞税の仕組み
申告を忘れたり、過少に申告したりすると、本来の税に加えて加算税がかかります。納付が遅れれば延滞税も上乗せされます。
つまり、無申告は「本来払う額+ペナルティ」の二重負担。期限内の申告を徹底するのが結局いちばん安く済みます。
税理士に相談するタイミングと費用感
私の本音を言うと、暦年贈与だけなら自分でできます。契約書と振込さえ押さえれば十分。
相談すべきは、(1)配偶者控除や住宅資金特例で大きな額を動かすとき、(2)相続時精算課税を選ぶか迷うとき、(3)相続税全体を見据えた贈与計画を立てるとき。判断を誤ると数百万円単位で変わります。費用は事務所により幅があるため、見積もりを取って比較してください。
贈与税がかからない方法のよくある質問
相談現場でよく聞かれる質問に、要点だけ答えます。

よくある質問
贈与税をゼロにする近道は、難しいテクニックではありません。使える枠を正しく選び、契約書と振込で証拠を残すこと。今日、その年の贈与額を書き出すところから始めてください。
