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生前贈与・相続との比較

相続税と生前贈与はどっちが得?税率比較と節税方法・2024年改正を解説

梶原 誠一 / 更新:2026-06-24
相続税と生前贈与はどっちが得?税率比較と節税方法・2024年改正を解説
相続税と生前贈与、結局どっちが得なのか。先に結論を言うと、財産が相続税の基礎控除を超えそうな家庭ほど、生前贈与を使った方が節税になるケースが多いです。

ただし「贈与すれば得」と単純に言い切れないのが、この分野の難しいところ。やり方を間違えると名義預金や定期贈与とみなされ、税務調査で追徴される失敗も実際にあります。

この記事では、相続税と贈与税の税率比較、家族構成別の試算、暦年課税と相続時精算課税の選び方、2024年改正の影響、そして贈与契約書の書き方や申告手続きまでを、実務の視点で整理します。私が15年の相続実務で見てきたつまずきポイントも交えて書きます。

相続税と生前贈与の違いとは?どちらが得かを先に結論

生前贈与vs遺産相続 どちらが得なのか税理士が回答します
生前贈与vs遺産相続 どちらが得なのか税理士が回答します

まずは土台から。相続税は亡くなったときに財産を受け取る人にかかる税金、生前贈与は生きているうちに財産を渡す行為です。この「渡すタイミング」の違いが、節税できるかどうかを分けます。

生前贈与とは(生きているうちに財産を渡すこと)

生前贈与とは、財産を持つ人が生きているうちに、子や孫などへ財産を無償で渡すことです。渡した側を贈与者、受け取った側を受贈者と呼びます。

渡した財産には贈与税がかかります。ただし、もらう人ごとに年110万円までは贈与税がかからない枠(基礎控除)があります。

相続税と贈与税の関係をやさしく整理

贈与税は、相続税を補う税金です。生前にどんどん渡して相続財産を減らされると相続税が取れなくなる。だから贈与には高めの税率がかけられています。

言い換えると、贈与税と相続税はセットで考える税金です。「贈与税だけ見て安い・高い」と判断すると、相続全体では損をすることがあります。

同じ金額なら税率は相続税より贈与税が高い

同じ金額を一度に渡す場合、税率は基本的に相続税より贈与税の方が高くなります。贈与税は相続税より急な累進税率の構造だからです。

たとえば一度に2,000万円を贈与すると、特例税率でも数百万円規模の贈与税がかかります。これだけ見ると「贈与は損」と思えてしまう。

それでも生前贈与が節税になる理由

理由は2つです。1つは、贈与には毎年使える年110万円の枠があり、回数を重ねて少しずつ渡せること。もう1つは、相続税が累進課税で、財産が多いほど高い税率がかかること。

相続財産の「一番高い税率がかかる部分」を、生前に低い負担で外へ移しておく。これが生前贈与の節税の本質です。一度に渡すのではなく、コツコツ続けるのがコツです。

相続税と贈与税の税率・計算を具体例で比較

ここからは数字で比べます。贈与税の計算、相続税の基礎控除、そして家族構成別の試算まで。実際の金額感を掴むと、判断がぐっと現実的になります。

相続税と贈与税の税率・計算を具体例で比較

贈与税の計算方法と特例税率(子や孫への贈与)

暦年課税の贈与税は、1年間にもらった額から基礎控除110万円を引き、残りに税率をかけて計算します。もらう人ごとに年110万円の枠です。

18歳以上の子や孫が親・祖父母からもらう場合は「特例税率」が使え、一般税率より少し低くなります。家族間の贈与では、この特例税率が基本になります。

相続税率と基礎控除のしくみ

相続税には大きな基礎控除があります。式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。相続財産がこの範囲内なら、原則として相続税はかかりません。

たとえば配偶者と子2人なら法定相続人は3人。基礎控除は3,000万円+600万円×3=4,800万円です。財産が4,800万円以下なら相続税の心配はいりません。

家族構成・財産額別のシミュレーション

基礎控除の感覚を掴むために、法定相続人の数ごとの基礎控除を表にしました。財産がこのラインを超えるかどうかが、生前贈与を検討する最初の分かれ目です。

法定相続人の数別 相続税の基礎控除
式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。
法定相続人の数基礎控除額目安の例
1人3,600万円配偶者のみ/子1人
2人4,200万円子2人
3人4,800万円配偶者+子2人
4人5,400万円配偶者+子3人

私の実務感覚で言うと、財産がこのラインを大きく超える家庭ほど、早めの生前贈与が効きます。逆に下回るなら、無理に贈与する必要はありません。

渡せる回数の違いが節税を生むしくみ

相続は人生で一度きり。一方、生前贈与は毎年できます。この「回数の差」がそのまま節税の差になります。

年110万円を10年続ければ1,100万円を非課税で移せる計算です。早く始めるほど回数を稼げる。だから生前贈与は、思い立ったときが一番のタイミングです。

生前贈与で相続税を減らす主な方法

生前贈与の手段は1つではありません。暦年課税、相続時精算課税、教育資金などの特例。それぞれ向き不向きがあります。順に見ていきます。

生前贈与で相続税を減らす主な方法

暦年課税(年110万円の基礎控除)を使う方法

もっとも基本的な方法が、暦年課税の年110万円枠を使うやり方です。もらう人ごとに年110万円まで非課税で渡せます。

子2人、孫2人に毎年110万円ずつ渡せば、年440万円を非課税で動かせます。時間をかけてコツコツ。これが王道です。

相続時精算課税制度を使う方法

相続時精算課税は、贈与者ごとに累計2,500万円まで特別控除が使える制度です。超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。

選べるのは、原則60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与です。一度選ぶと、その贈与者からの贈与については原則撤回できません。

注意したいのは、この制度で渡した財産は、基礎控除部分を除き、相続時に相続財産へ加算して精算される点です。つまり「先送り」の側面があります。

教育資金・結婚子育て資金の一括贈与の特例

教育資金や、結婚・子育て資金を一括で贈与する特例もあります。金融機関で専用口座を作り、目的に使った分が非課税になる仕組みです。

正直、これらは要件や手続きが細かく、使い切れずに残ると課税される場合があります。孫の学費をまとまった額で援助したい、といった明確な目的があるときに検討する制度です。

暦年課税と相続時精算課税はどちらを選ぶべきか

2024年改正で、両者の比較は大きく変わりました。判断材料を表にします。

暦年課税と相続時精算課税の比較
2024年1月以降の取り扱い。
項目暦年課税相続時精算課税
年110万円の枠あり(毎年)あり(2024年新設・申告不要)
大きな控除なし累計2,500万円の特別控除
相続時の加算死亡前の一定期間分を加算基礎控除を除く累計額を加算
撤回制限なし原則撤回不可
向いている人早くから長く渡せる人まとまった額を早く渡したい人

私の見立てでは、若くて贈与を長く続けられる人は暦年課税。高齢で時間が限られ、まとまった財産を子に移したい人は相続時精算課税。ここは家庭ごとに本当に分かれるので、迷ったら試算してから決めるべきです。

【2024年改正】生前贈与で必ず知るべき変更点

「相続税は払わなくていい!」贈与税を払ってでも生前に贈与すべき理由をわかりやすく解説します!
「相続税は払わなくていい!」贈与税を払ってでも生前に贈与すべき理由をわかりやすく解説します!

2024年1月から、生前贈与のルールが大きく変わりました。知らないまま続けると、節税効果が思ったほど出ないことがあります。要点は2つです。

生前贈与加算が3年から7年へ延長(経過措置も解説)

暦年課税の贈与でも、相続開始前の一定期間内に渡した分は相続税の課税価格に加算されます。改正で、この期間が2024年1月1日以降の贈与から順次7年へ延長されました。

延長は段階的に適用されます。延長された分については、合計100万円を控除できる経過措置があります。

率直に言うと、これは「駆け込み贈与」を封じる改正です。亡くなる直前にまとめて渡しても、加算されて節税にならない。だからこそ、早く始めることの価値が以前より上がりました。

相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設

2024年1月以降、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円部分は、相続時の課税価格に加算されません。

しかも、この基礎控除部分は贈与税の申告も不要です。毎年110万円までなら、申告なしで非課税。相続時にも戻されない。地味ですが、かなり大きな改正です。

改正でどちらの制度が有利になったか

改正で評価が上がったのは相続時精算課税です。年110万円が相続時に加算されないため、暦年課税の「7年加算」を避けられる場面が出てきました。

ただし一度選ぶと撤回できない弱点は残ったまま。私は、財産規模が大きく時間が限られる高齢者には相続時精算課税を勧めることが増えましたが、若い世代には今でも暦年課税を基本に考えます。

家・不動産を生前贈与する場合の判断ポイント

現金と違い、不動産の贈与は慎重に。特例で得することもあれば、別の特例が使えなくなって損することもあります。ここは判断ミスが金額に直結します。

家・不動産を生前贈与する場合の判断ポイント

住宅取得等資金の非課税の特例のメリット

子や孫がマイホームを買うための資金を援助する場合、住宅取得等資金の贈与の特例で一定額まで非課税にできます。年110万円とは別枠で使えるのが利点です。

住宅という大きな買い物のタイミングで、まとまった額を非課税で渡せる。子育て世代の援助としては使い勝手のいい制度です。

小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性

ここが落とし穴です。自宅の土地を生前に贈与してしまうと、相続時に使える小規模宅地等の特例(評価額を最大8割減らせる)が使えなくなることがあります。

贈与税を非課税にできても、相続時の大幅な評価減を失う。トータルで見ると損、というケースを実務で何度も見ました。自宅の土地の生前贈与は、私は基本的に勧めません。

おしどり贈与のデメリットと登記費用・不動産取得税

婚姻20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する「おしどり贈与」には2,000万円の配偶者控除があります。ただ、見落とされがちなコストがあります。

贈与で名義を移すと、不動産取得税がかかり、登記の登録免許税も相続より高くなります。配偶者はもともと相続税の優遇が大きいので、節税目的だけなら効果が薄いことも。実行前に必ず試算してください。

贈与税申告書は必ず提出する

非課税の特例を使うときは、贈与税がゼロでも申告書の提出が要件になっているものがあります。住宅取得等資金やおしどり贈与がその代表です。

申告を忘れると特例が使えず、満額の贈与税がかかる。これは本当にもったいない失敗です。期限内の申告を絶対に忘れないでください。

生前贈与の失敗例と税務調査で指摘されない対策

生前贈与で一番怖いのは、税務調査での指摘です。せっかく渡したのに「贈与と認められない」と言われ、相続財産に戻されて課税される。実際に多いつまずきを挙げます。

生前贈与の失敗例と税務調査で指摘されない対策

名義預金とみなされない通帳・振込・契約書の管理

名義預金とは、子名義だが実質は親が管理している預金のこと。これは贈与と認められず、相続財産として課税されます。

対策は3つ。受贈者本人が口座を管理し通帳・印鑑を持つこと。手渡しでなく振込で記録を残すこと。そして贈与契約書を毎回作ること。私が現場で最も重視するのがこの3点です。

定期贈与(連年贈与)と認定されない注意点

毎年110万円を10年贈与する約束を最初に結んだとみなされると、「1,100万円を分割で渡した」と扱われ、まとめて課税されることがあります。これが定期贈与の論点です。

対策は、毎年その都度、別個に贈与契約を結ぶこと。金額や時期をあえて少し変えるのも有効です。「最初に総額を約束していない」と示せる状態を作っておきます。

特別受益で遺産分割トラブルになった実例

生前贈与は、もらえなかった他の相続人から「不公平だ」と言われる火種になります。これが特別受益の問題です。

私が関わった案件でも、長男にだけ多額の援助があったことが後で発覚し、遺産分割協議が紛糾したことがありました。誰に何を渡したかを記録し、できれば家族で共有しておく。お金より人間関係でもめます。

遺留分を侵害しない範囲で贈与する

一部の相続人には、最低限受け取れる取り分(遺留分)があります。特定の人に偏った贈与をすると、後で遺留分を請求され、贈与を受けた人が金銭の支払いを迫られることがあります。

節税だけを追って一人に集中させない。遺留分を意識して配分する。ここを外すと、節税できても家族が壊れます。

生前贈与の始め方と手続きの実務

失敗事例が多数…絶対にやってはいけない生前贈与を税理士がわかりやすく解説!
失敗事例が多数…絶対にやってはいけない生前贈与を税理士がわかりやすく解説!

最後は、今日から動くための実務です。やることはシンプル。契約書を作り、振込で渡し、必要なら申告する。順に説明します。

贈与契約書の書き方とひな形のポイント

贈与契約書には、誰が・誰に・いつ・何を・いくら渡すかを書きます。贈与者と受贈者の双方が署名・押印すること。これで「双方が合意した贈与」だと示せます。

必ず入れる項目は、贈与年月日、贈与する財産の内容と金額、双方の住所氏名、署名押印。毎年の贈与なら、その都度1枚ずつ作ってください。

贈与税の申告手続き・必要書類・期限・納付方法

贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。贈与税が発生する場合は、この期間に受贈者が申告・納付します。

相続時精算課税の年110万円基礎控除内なら、贈与税の申告は不要です。一方、特例を使うときは税額がゼロでも申告が要件になることがあるので注意してください。

認知症リスクに備えた早期着手の重要性

見落とされがちですが、贈与は本人の判断能力があってこそ成立します。認知症などで判断能力が低下すると、贈与契約自体ができなくなります。

7年加算の改正もあり、早く始めるほど有利になりました。元気なうちに動く。これは節税の話であると同時に、家族を困らせないための準備でもあります。

相続税と生前贈与のよくある質問

最後に、相談で特によく受ける質問をまとめます。

相続税と生前贈与のよくある質問

よくある質問

相続税と生前贈与とは何が違う?
相続税は人が亡くなったときに財産を受け取る人にかかる税金です。生前贈与は、生きているうちに財産を無償で渡す行為で、渡した分には贈与税がかかります。違いは「渡すタイミング」で、生前に少しずつ移すことで相続財産を減らし、相続税を抑えられます。
費用はどれくらいかかる?
暦年課税で年110万円以内に収めれば贈与税はかかりません。超えた分には贈与税がかかります。不動産を贈与する場合は、これに加えて不動産取得税や登記の登録免許税が発生します。税理士に依頼する場合の報酬は別途必要です。
何から始めればいい?
まず相続財産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えそうかを確認します。超えそうなら、暦年課税と相続時精算課税のどちらが合うかを試算し、贈与契約書を作って振込で渡すのが基本の流れです。判断に迷う規模なら、早めに税理士へ相談してください。

相続税と生前贈与は、早く動いた人ほど選択肢が広がります。まずは自分の財産が基礎控除を超えるかどうか。そこを確認するところから始めてください。

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梶原 誠一

梶原 誠一

税理士(相続・贈与専門) ・ 相続案件の実務対応歴15年以上

税理士事務所での実務経験をもとに、生前贈与や相続税対策について制度の一次情報と実際の手続きを照らし合わせながら書いています。難解な税制をできるだけ具体的な数字と手順で伝えることを心がけています。

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