贈与税の申告で必要な書類を徹底解説|取得方法と費用も網羅

この記事では、暦年課税・相続時精算課税・住宅取得等資金の特例という代表的なケースごとに、必要書類を一覧で示します。さらに戸籍謄本や登記事項証明書の取り方と費用、申告書の書き方、e-Taxでの提出手順、期限に遅れたときのペナルティまで通しで解説します。
書いているのは相続・贈与専門で実務歴15年の税理士、梶原です。制度の一次情報と実際の手続きを照らし合わせながら、自分のケースで何を揃えればいいかが分かる形でまとめました。
贈与税の申告とは?必要書類を知る前に押さえる基本

必要書類の話に入る前に、そもそも自分は申告がいるのかを確かめておきましょう。ここを飛ばすと、不要な書類を集めたり、逆に申告漏れで加算税を取られたりします。
贈与税の申告書の提出期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。国税庁の申告手続案内にこの時期が明記されています。
贈与税の申告が必要なケース
申告が必要になる主なケースは3つです。基礎控除額を超える贈与を受けたとき、相続時精算課税制度を使うとき、住宅取得等資金などの非課税特例を使うとき。
見落としやすいのが特例の利用です。非課税の特例は「申告して初めて適用される」ものが多く、税額がゼロでも申告書を出さないと特例が使えません。ここは本当に注意してください。
基礎控除額を超える贈与を受けたとき
暦年課税では、1月1日から12月31日までに受けた贈与の合計が110万円を超える場合に申告対象になります。110万円は基礎控除額です。
複数の人からもらった場合は合算して判定します。父から60万円、母から60万円なら合計120万円で、超えた分が課税対象。「一人あたり110万円まで非課税」と勘違いしている方が毎年います。
申告が不要なケースの見分け方
暦年課税で年間110万円以下なら申告は不要です。また、相続時精算課税制度でも、2024年以後の贈与については年間110万円以下なら申告不要になりました。ただし制度を使う初回の届出など、別途必要な手続きは残ります。
扶養義務者からの生活費・教育費で通常必要な範囲のもの、香典や祝い金で社会通念上相当なものは、そもそも贈与税の対象外です。これらは申告も書類も不要です。
贈与税の申告に必要な書類一覧
ここが本題です。制度別に分けて表で整理しました。まず全員共通の書類を押さえ、自分が使う制度の行を追加で揃えればOKです。

| 区分 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 全員共通 | 贈与税の申告書第1表、本人確認書類(マイナンバーカード、または番号確認書類+身元確認書類) |
| 暦年課税 | 共通書類のみ。第1表で計算 |
| 相続時精算課税(初回) | 第2表、相続時精算課税選択届出書、贈与者・受贈者の関係がわかる戸籍関係書類 |
| 住宅取得等資金の非課税 | 第1表の2、戸籍謄本、源泉徴収票、売買契約書や工事請負契約書の写し、新居の登記事項証明書 など |
全員に共通して必須の書類
どの制度でも必ず要るのが、申告書第1表と本人確認書類です。国税庁は第1表を「贈与税の申告をする場合に使用」する様式と明記しています。
本人確認は、マイナンバーカードがあればそれ1枚で番号確認と身元確認を兼ねます。カードがない場合は、通知カード等の番号確認書類と、運転免許証等の身元確認書類の組合せが必要です。
暦年課税制度を使う場合の書類
暦年課税は、追加書類が基本的にありません。共通書類だけで足ります。現金の贈与なら贈与契約書、不動産なら固定資産税評価証明書など、贈与財産の内容を確認できる資料を手元に置いておくと記入がスムーズです。
相続時精算課税制度を使う場合の書類
初めてこの制度を使う年は「相続時精算課税選択届出書」の提出が必須です。これを出し忘れると暦年課税扱いになり、後から取り消せません。私が見てきた中で最も多い失敗がこれです。
加えて、贈与者と受贈者の関係(親子・祖父母と孫など)を示す戸籍関係書類が求められます。計算は第2表で行います。
住宅取得等資金の非課税特例を使う場合の書類
この特例は添付書類が多めです。第1表の2に加え、戸籍謄本、源泉徴収票、売買契約書や工事請負契約書の写し、新築・取得した住宅の登記事項証明書などが必要になります。住宅の状況によって、省エネ性能などの証明書が追加で求められることもあります。
特例ごとに追加で必要になる書類
代表的な特例には、それぞれ固有の添付書類があります。適用漏れで損をしないよう、自分が使えそうな特例があれば書類も合わせて確認しておきましょう。

夫婦間贈与の配偶者控除(おしどり贈与)の書類
婚姻20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与した場合、最大2,000万円が控除できる特例です。基礎控除110万円と合わせれば2,110万円まで非課税にできます。
追加書類として、戸籍謄本のほか戸籍の附票の写し、贈与を受けた居住用不動産の登記事項証明書などが必要です。この特例も、申告しなければ適用されません。
教育資金・結婚子育て資金の一括贈与の書類
祖父母などから教育資金や結婚・子育て資金を一括で受け取る非課税特例は、金融機関を通じて専用口座を作り、その金融機関経由で非課税申告書を提出する仕組みです。通常の贈与税申告書とは手続きの入口が違います。
自分で税務署へ書類を持ち込むのではなく、まず取引する金融機関の窓口に相談するのが実務上の正解です。
共有名義で住宅を取得した場合の注意点
夫婦で資金を出し合って家を買うとき、出資割合と登記の持分がずれると、ずれた分が贈与とみなされることがあります。たとえば夫が全額を出したのに持分を半分ずつにすると、半分相当が妻への贈与扱いになりかねません。
持分は、実際に出したお金の割合に合わせて登記する。これが余計な贈与税を避ける基本です。住宅資金の特例を使う場合は、登記事項証明書で持分まで確認されます。
必要書類の取得方法・入手先・費用

書類の中身が分かったら、次はどこで取るか。役所で取る書類は手数料がかかり、自治体によって金額が前後します。ここでは一般的な目安と入手先を整理します。
| 書類 | 入手先 | 用途 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場(窓口・郵送・コンビニ) | 贈与者と受贈者の関係確認 |
| 住民票・戸籍の附票 | 住所地・本籍地の市区町村役場 | 住所・居住の確認(配偶者控除など) |
| 登記事項証明書 | 法務局(窓口・オンライン請求) | 不動産の所有・持分の確認 |
| 固定資産税評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場 | 不動産の価額確認 |
戸籍謄本・住民票の取り方と費用
戸籍謄本は本籍地の役場で取ります。本籍が遠方なら郵送請求が使えます。マイナンバーカードがあれば、コンビニのマルチコピー機で取得できる自治体も増えました。窓口が開いていない時間でも取れるので、私はよくこの方法を案内しています。
住民票も同様に、住所地の役場かコンビニで取得します。手数料は自治体ごとに違うため、請求先の案内で確認してください。ここで不確かな金額を断定するのは避けます。
登記事項証明書の取り方と費用
不動産の登記事項証明書は法務局で取得します。最寄りの法務局でなくても、全国どの法務局でも請求できるのが便利な点です。オンラインの登記情報サービスを使えば、自宅から請求して窓口や郵送で受け取れます。
贈与契約書の作り方とその重要性
贈与契約書は申告の必須添付書類ではありません。それでも私は必ず作るよう勧めています。理由は単純で、後から「贈与があった事実」を証明する最強の証拠になるからです。
書く内容は、いつ・誰が・誰に・何を・いくら贈与したか、そして双方の署名押印。現金なら振込で記録を残し、契約書の日付と一致させておくと、名義預金と疑われたときの反論材料になります。
贈与税申告書の書き方と提出の流れ
書類が揃ったら申告書の作成です。様式は毎年更新されるので、必ず最新の年分を使ってください。国税庁は令和7年分の様式一覧を公表しています。

第1表・第1表の2・第2表の書き方
3つの表は役割が分かれています。第1表は全員が使う基本表。第1表の2は住宅取得等資金の非課税の計算用。第2表は相続時精算課税の計算用です。
| 様式 | 主な用途 |
|---|---|
| 第1表 | 贈与税の申告をする場合に使用する基本表 |
| 第1表の2 | 住宅取得等資金の非課税の計算明細 |
| 第2表 | 相続時精算課税の計算明細 |
暦年課税だけなら第1表のみ。住宅資金特例なら第1表+第1表の2。相続時精算課税なら第1表+第2表、という組み合わせで考えると迷いません。
申告書の取得方法と提出先
申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に沿って入力するか、税務署の窓口で用紙を受け取って作成します。提出先は、贈与を受けた人(受贈者)の住所地を管轄する税務署です。贈与した側ではない点に注意してください。
電子申告(e-Tax)の手順と事前準備
e-Taxを使えば税務署に行かずに提出できます。事前に必要なのは、マイナンバーカードと、読み取り対応のスマートフォンまたはICカードリーダーです。
流れはシンプルです。作成コーナーで贈与の内容を入力し、自動計算された税額を確認し、マイナンバーカードで電子署名して送信する。添付書類はデータで送るか、別途郵送・持参します。私の実感では、初めてでも入力自体は1時間ほどで終わります。
申告期限・納付方法・間違えたときの対応
申告と納付には期限があります。遅れるとペナルティが付くので、ここは具体的な金額のイメージまで持っておきましょう。

贈与税の申告期限と納付方法
申告期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで。納付期限も同じ3月15日です。申告だけ済ませて納付を忘れる人がいるので、両方セットで覚えてください。
納付方法は、金融機関や税務署の窓口での現金納付のほか、口座引落しの振替納税、クレジットカード納付、コンビニ納付、e-Taxによる電子納税が用意されています。自分が使える方法を事前に選んでおくと、期限直前で慌てません。
期限に間に合わなかった場合のペナルティ
期限後の申告には無申告加算税が、納付が遅れた分には延滞税がかかります。税額や遅れた期間に応じて加算されるため、放置するほど負担が重くなります。具体的な税率は国税庁の最新案内で確認してください(ここでは正確な率の断定は避けます)。
私の経験上、期限を過ぎても自分から早めに申告すれば、加算税は軽くなる方向に働きます。「気づいたら一日でも早く出す」が鉄則です。
誤りがあったときの修正申告・更正の請求
申告後にミスに気づいたら、2つの直し方があります。税額を少なく申告しすぎていたら修正申告で増やす。逆に多く払いすぎていたら更正の請求で還付を求める。
特例の適用を忘れて多く納めてしまった場合も、更正の請求で取り戻せる余地があります。「もう出したから諦める」必要はありません。
【実例で確認】判断に迷う贈与と書類の準備ミス

実務で一番もめるのは、書類の枚数より「これは贈与なのか」という判断です。ここを誤ると、申告したつもりでも後から課税されます。
名義預金など贈与とみなされるケース
親が子ども名義の口座にコツコツお金を入れていた。よくある話です。ところが子どもが通帳の存在も印鑑も知らず、自由に使えない状態だと、その口座は「名義は子でも実質は親の財産」=名義預金と判断されます。
こうなると贈与は成立しておらず、いざ相続のときに親の財産として課税されます。防ぐには、贈与契約書を作り、子ども自身が管理する口座へ振込で移し、もらった側が通帳と印鑑を持つこと。形式と実態の両方を揃えるのがポイントです。
税理士に依頼すべきケースと費用の目安
正直に言うと、暦年課税で現金110万円超を1件だけ申告する程度なら、作成コーナーを使えば自力で十分できます。私が依頼を勧めるのは、不動産が絡む贈与、相続時精算課税の選択、住宅資金や配偶者控除など特例を使う場合です。
これらは書類が多く、判断を誤ると後の相続税まで影響します。費用は内容で変わるため一律には言えませんが、特例や不動産が絡む申告は、報酬を払っても専門家に任せたほうが安いと感じる場面が多いです。
贈与税の申告 必要書類に関するよくある質問
よくある質問
最後にひとつだけ。書類は揃ったが「これは贈与なのか」に少しでも引っかかったら、出す前に管轄税務署か専門家に確認してください。準備のやり直しより、判断の取り違えのほうがずっと痛い。まずは自分の制度を決めて、共通書類から集め始めましょう。

